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2017年04月19日

文学とは何か

文学とは何か.jpg
加藤 周一
角川ソフィア文庫 778円
              
二十世紀最大の評論家、加藤周一氏の名前が受験国語で頻繁に登場したのは、少し前の時代のこと。『雑種文化』で、文学史の教科書にも名前が載る氏が31歳での執筆のこの書は、1971年に出版された。センター試験では、1991年度の追試験の評論の問題として、この本の最終章である「文学の概念についての仮説」から引用され、出題されている。先日、書店で眺めていた書棚にこの本の背表紙を偶然見つけ、入試問題として授業で何度も扱った一節を含む同書の全体に、あらためてふれてみた。そして、少なからず驚かされた。
それは、氏の文章が、広汎な知識の引用と、鋭い論理展開に特徴づけられながら、実際には、ひどく読み易く平明だということだった。すぐれた評論は、人を寄せ付けないほど難解ではなく、むしろ読み手の脳を心地よく刺激する発見に満ちている。氏の文章がそうであるからこそ、氏は最優先に読むべき評論家とみなされてきたのだろう。
「特殊と普遍」を論じた以下の一節だけでも、そのことを理解してもらえるはずだ。「ジャン・ジャック・ルソオは、彼自身の人生を告白したので、人生一般を論じたのではありません。しかし、彼の『告白』が、人間の感情に関する普遍的な真理を呈出しているという点で、一束の心理学的事実におとるとは考えられないでしょう。統計だけが普遍的な知識を獲得する唯一の方法ではない。特殊なものを、その特殊性に即して追求しながら、普遍的なものにまで高めること ―― それこそ文学の方法であり、文学に固有の方法です」。(K)
posted by 紫雲国語塾 at 13:59| 大分 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 紫雲コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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