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2017年10月05日

夜想曲集

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カズオ・イシグロ

早川書房 ・1680円

カズオ・イシグロ(1954-)は、『日の名残り』(1989年)で、イギリスで最も権威ある賞「ブッカー賞」を受賞した、世界的作家。長崎県長崎市で、日本人の両親の元に生まれましたが、5歳でイギリスに移住。成人までは日本国籍、その後、イギリスに帰化しています。2010年に映画化された『わたしを離さないで』で、また、2012年4月に、NHKで「カズオ・イシグロを探して」と題したドキュメンタリーが放送され、日本でもより知られるようになりました。
『夜想曲集』(2009年)は、「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」という副題が付いた、初の短編連作集。どの物語も、人生の後半や終盤にある人物が、自らの過去(=夕暮れ)を、ジャズ、クラシック、ポピュラーなどの音楽とともに振り返ります。
この連作短編集を読んで私は、自分が若い頃にこの本に出会ったならば、今とは違い、ストーリーの展開や場面設定の巧妙さにばかり感嘆しただろうと思います。しかし、人生も優に半ばを過ぎ、振り返る時間が堆積した今、私がこの短編集から読み得たのは、感情の渦に巻かれ、愚かしい選択を繰り返してきた人間の、それでも肯定する他ない人生への愛着でした。
いずれにせよ、これが私の人生だった。そしてこれからもそれは同じ――。作家と出身地を同じくする私は、身勝手にも、遠いイギリスからそんな激励をもらった気持ちなのです。(K)

【追記】
この原稿を書いたのは、2012年1月でした。そして、今日、カズオ・イシグロさんのノーベル文学賞受賞のニュースが飛び込んできました。おめでとうございます!(K)
posted by 紫雲国語塾 at 20:53| 大分 ☁| Comment(0) | 紫雲の本棚から | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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