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2020年02月11日

クロイツェル・ソナタ/悪魔

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レフ・トルストイ著 
新潮文庫 539円

教育の現場において「政治」「宗教」「性」はどれもいまだにタブーだ。中でも「性」は語りにくい。古文の授業で、恋愛の場面を十代の人に詳しく説明するのはやはり憚られる。しかし、芸術や文学において、それは、避けて通れないどころか、むしろ主題とも言うべきものだ。そしてそれが人間にとって普遍的根元的である以上、「性」を抑圧し封印していてはかえって危ない。「性」を自分の中でどのように位置づけるか、常に誰もが問われている。

トルストイは、十九世紀から二〇世紀はじめを生きたロシアの作家。代表作は、『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』『復活』など。キリスト教的な人間愛と道徳的自己完成を説いた大作家として知られる。若いころの放蕩を経て、「世界三大悪妻」の一人ソフィアとの間に多くの子供を残し、人生の終盤は、自殺願望を抱えつつ創作したが、一時は作家生活を捨て、最後には列車で移動途中の小さな駅でひっそりと亡くなった。

『クロイツェル・ソナタ』は、実は、ベートーヴェン作曲のヴァイオリン・ソナタ第九番の通称。彼の全十曲のソナタ中でも最も激しい曲。主人公の妻が音楽家との演奏を楽しむこの曲の第一楽章は、「魂を苛立たせ」「自分自身を、自分の真の状態を忘れさせ、自分のではない何か別の状態へと運び去ってくれる」ものとして語られる。そして、それは妻の浮気心を高め、主人公を激しい嫉妬へと駆りたてる。妻に貞節を求めるあまり、主人公は、悲劇的な結末へと突き進んで行く。実際の事件を下敷きにした『悪魔』も、同じく性と倫理の葛藤を描く作品。

語りにくいからこそ読むべきテーマに、この作品を通じて向き合ってみてほしい。(K) 

2014年2月・紫雲国語塾通信「紫のゆかり」掲載
posted by 紫雲国語塾 at 12:57| 大分 ☀| Comment(0) | 紫雲の本棚から | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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