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2021年05月18日

日本語の古典                

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山口 仲美
岩波新書・800円+税

勉強の科目の一つであり、多くの高校生を悩ませている古典(ここでは、日本の古文のこと)が、ワクワクとおもしろく感じられたら、どれほど幸せだろう。もちろん、文法や単語、古典の世界の「常識」を勉強し、身につけることも必要だ。しかし、それらに向き合うだけで終わってしまうなら、古典を読む楽しみまではたどり着けない。この本のように古典の楽しみを活き活きと語る本が、勉強の先にあるおもしろさを伝えてくれる。時代のフィルターを通過し、今に読み継がれる名作たちを、主体的な楽しみとしてつかみ直すのに、これほどの好著はない。
『古事記』から『春色梅児誉美』まで、日本の古典の名作を時代順に全三〇作、ぴったり八ページずつ紹介するこの本は、どこからでも読み始めることができ、気軽に読める。また、一つひとつの作品の最も印象深い場面を具体的に紹介してくれているので、ストーリーを読む楽しみもある。『平家物語』を「死の文学」としてとらえ紹介する「敦盛最期」の場面、『太平記』の楠木正成の活躍ぶりなどは、この本によってさらに面白く感じられるはずだ。また、「下ネタ満載」の『東海道中膝栗毛』が、ハラスメントだらけのピリピリした現代社会の価値観を考え直させると指摘するなど、古典が現代に投げかける意味も教えてくれる。
また、この本では、全体を通して、筆者の読書体験とその深まりを率直に書いている。一読しただけでは面白く思えなかった物語が、そこで使われている日本語の特質に注目して読み直すことで、その面白さにあらためて気づく。各時代ごとに日本語はこんなにも活き活きと語られていたのだ。その魅力を現代に教えてくれる本。〈K〉
(紫雲国語塾通信〈紫のゆかり〉2016年8月号掲載)               
posted by 紫雲国語塾 at 17:07| 大分 ☔| Comment(0) | 紫雲の本棚から | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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