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2022年04月17日

ヴェニスの商人の資本論

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岩井 克人
ちくま学芸文庫
950円+税

今回紹介する本のタイトルにも使われている「ヴェニスの商人」は、シェイクスピアの手による有名な戯曲であり、その内容について知っている人も多いだろう。

この有名な物語を用いて、筆者は、資本主義経済についての解説をする。このように、たとえによって何かを解説するという試みは必ずしも珍しいものではない。しかし、この文章が他と違うのは、経済学を説明するために、この物語の一部を利用するという一般的なやり方ではなく、まず「ヴェニスの商人」の物語全体、そして登場人物を徹底的に分析し、それらについて詳細な経済学的考察をしていることだ。

例えば、交易商人であるアントーニオを用いて、価値の「差異」によって利潤を生む「交易」という商業活動についての解説をしている。アントーニオの属するヴェニスという共同体においては、仲間との強い連帯が重要とされており、そこでは利潤を生む交換は存在しがたいが、一方で、交易によって彼が利潤を生んでいるのは、その相手が異邦人の共同体であるからなのだ、と論じ、そこからさらにこの物語の核となる「利子」という概念についても説明している。

この本には、表題となっている「ヴェニスの商人の資本論」をはじめとして、現代文の教材として用いられることもある「広告の形而上学」など、10篇以上の文章が収められており、中には極めて専門的な経済学に関する文章もある。また筆者の「資本主義と『人間』」は、2010年のセンター試験の題材となっている。比較的読みやすい「ヴェニスの商人の資本論」をきっかけに、経済学という、名前は知っていても、なかなかなじみのない分野に触れてみて欲しいと思う。〈T〉     
(紫雲国語塾通信「紫のゆかり」2017年12月号に掲載)

posted by 紫雲国語塾 at 15:34| 大分 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 紫雲の本棚から | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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