「紫雲国語塾」のオフィシャルブログです。
塾内通信「紫のゆかり」「ことばのちから」に掲載された記事をご紹介します。
また、最新行事についてお知らせいたします。

2020年02月11日

クロイツェル・ソナタ/悪魔

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レフ・トルストイ著 
新潮文庫 539円

教育の現場において「政治」「宗教」「性」はどれもいまだにタブーだ。中でも「性」は語りにくい。古文の授業で、恋愛の場面を十代の人に詳しく説明するのはやはり憚られる。しかし、芸術や文学において、それは、避けて通れないどころか、むしろ主題とも言うべきものだ。そしてそれが人間にとって普遍的根元的である以上、「性」を抑圧し封印していてはかえって危ない。「性」を自分の中でどのように位置づけるか、常に誰もが問われている。

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2019年09月18日

生きようよ 死んじゃいけない人だから

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細谷 亮太
岩崎書店 1404円

自分の心がささくれだっているな、と思うなら、細谷さんの本を読むといい。私たち人間にとって何がいちばん大事だったかを思い出させてくれるからだ。
細谷亮太さんは、1948年生まれ、東北大学医学部を卒業後、聖路加国際病院に勤務。その後、同病院副院長、および小児総合医療センター長。専門は、一般小児科のほか、小児がん、小児のターミナルケア。エッセイを多数上梓しているほか、俳人としても活躍(巻末のプロフィールより)。
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2019年08月19日

怒り 心の炎の静め方

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ティク・ナット・ハン
岡田 直子 訳
サンガ・1,238円+税

人間の感情の「喜怒哀楽」のうち、もっとも程度が低く厄介なのが「怒り」だと、何かで読んだことがある。「怒り」は、時に必要以上に燃え盛り、それまで用心深く大切にしてきた人間関係も焼き尽くす。モノに八つ当たりする。自分に矛先を向けることもある。他者への殺意が形づくられるのも、「怒り」という燃焼度の高い燃料がなければあり得ない。他の3つの感情も消し去ってしまう「怒り」という感情をコントロールできるかどうか――。それが誰にも大切な課題であることは論を俟たない。
 
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2019年02月07日

国境のない生き方―私をつくった本と旅

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ヤマザキマリ
小学館新書 740円+税

お子さん3人を全員、東大理Vに入れた「佐藤ママ」が話題だが、ご本人のテレビ出演での話を聞いてみれば、どういう人生を設計するかの一つの冷静かつ現実的な選択だった。努力できる範囲の選択は、自分でコントロールしようとするその価値観は、それほど非難すべきものにも思えなかった。
翻って、この本の著者、ヤマザキマリさんは、お母さんの敷いてくれたレールが「大自然と旅、そして書物が、娘を育むための大事な要素」というもの。「世間の壁や経済的困難に直面することになっても惑わされない意志が身につくよう育てよう、まずは世界の、地球の広さを教えてあげよう、というのが教育方針だった」。世界をめぐる旅と、その折々に読み影響を受けた本で、著者の半生を振り返る一冊。
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2018年08月29日

101年目の孤独――希望の場所を求めて

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高橋源一郎
岩波書店 1,800円+税

朝日新聞に、作家・高橋源一郎さんによるルポルタージュの大きなコラムが定期的に掲載されていました。個人の幸福と富の追求ばかりが無前提に信じられている時代に、そうではない視点を示してくれる、数少ない文章でした。そもそも、作家という職業の人たちが、必ずしもみんな現代という時代にコミットしているわけではないでしょう。現代に自ら関わる作家である彼の、「著者初のルポルタージュ」として世に出た、この本をぜひ読んでほしいです。
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2018年02月06日

穴/HOLES 

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ルイス・サッカー
幸田 敦子
講談社文庫 620円・税込

ある日、主人公の少年、スタンリーは無実の罪で少年矯正施設に収容され、一日ひとつ、大きな穴を掘るという罰を科される。監視役の大人たちの理不尽さなどに苦しめられながらも、スタンリーは周囲の仲間と協力しつつ、苦境と戦い続ける。そんな中で、この穴掘りが単なる矯正を目的としたものではなく、何かを探すためのものであることを知ったスタンリーたちは……。
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2017年11月24日

いのちの半ばに

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アンブローズ・ビアス
西川 正身
岩波文庫・絶版

「国語力をつけるにはどうすればいいか」という質問を受けることが多い。ところがこの質問をされる方は、必ずと言っていいほど、質問した瞬間にご自分で答に気づいた表情をし、私がおもむろに「読書が…」と口を開くと、「やはり…」となる。「読書」は、本当は当然の行為なのに、いつのまにか、趣味や嗜好性の一部に取り込まれ、「読書しない」という個性があるかのように語られる。あるいは、「読書したら国語の成績が上がる」かどうかで、読書という行為の価値を計ろうとする。「これを飲めば痩せる」というのは、商業主義の好む論理であって、それを読書に当てはめるのはあまりにナイーブだ。宿題の山、試験の嵐、部活動の疲労、といった苦難の中、どうか読書をしてほしい。その意義は、テストの成績ではなく、あなたの思考力をつくり、感性を育て、判断力を高め、想像力を大きくする。読書は、あなたの人間形成に寄与する、もっと高い次元のものだとわかってほしい。
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2017年10月05日

夜想曲集

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カズオ・イシグロ

早川書房 ・1680円

カズオ・イシグロ(1954-)は、『日の名残り』(1989年)で、イギリスで最も権威ある賞「ブッカー賞」を受賞した、世界的作家。長崎県長崎市で、日本人の両親の元に生まれましたが、5歳でイギリスに移住。成人までは日本国籍、その後、イギリスに帰化しています。2010年に映画化された『わたしを離さないで』で、また、2012年4月に、NHKで「カズオ・イシグロを探して」と題したドキュメンタリーが放送され、日本でもより知られるようになりました。
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2017年05月22日

旅行者の朝食

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米原 万里
文春文庫 540円

「生きるために食べる」のか、「食べるために生きるのか」。本書の中で印象的に用いられる言葉です。あなたは自分のことをどちらだと考えるでしょうか?本書は、後者であることをはっきりと自認する筆者による、食べ物についての著書ですが、単なるエッセイではありません。
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2017年04月19日

文学とは何か

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加藤 周一
角川ソフィア文庫 778円
              
二十世紀最大の評論家、加藤周一氏の名前が受験国語で頻繁に登場したのは、少し前の時代のこと。『雑種文化』で、文学史の教科書にも名前が載る氏が31歳での執筆のこの書は、1971年に出版された。センター試験では、1991年度の追試験の評論の問題として、この本の最終章である「文学の概念についての仮説」から引用され、出題されている。先日、書店で眺めていた書棚にこの本の背表紙を偶然見つけ、入試問題として授業で何度も扱った一節を含む同書の全体に、あらためてふれてみた。そして、少なからず驚かされた。
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2017年01月16日

楽園のカンヴァス

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原田 マハ

新潮社 1600円+税

アンリ・ルソーが残した最後の作品「夢」。しかし、ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンは、とある大邸宅でその「夢」に酷似した絵画を目にする。持ち主である富豪は、その真贋を見極めた者にその絵画を譲ることを宣言するが、その期限は七日間。ティムと、日本人研究者、早川織絵は、対立しながらも、富豪から手渡された古書を読み進めていくことで、その絵画に秘められた謎に立ち向かう…。
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2016年11月13日

ねこのみち

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クオン・クエンシャン
薩摩美知子 訳
アーティストハウスパブリッシャーズ 絶版

中国人の著者が、味わいのある四〇点の猫の墨絵とともに、『論語』『唐詩選』『紅楼夢』『禅』『孫子』などより厳選した、孔子、孟子、孫武らの名言を、英語とわかりやすい日本語の口語訳で紹介した一冊。中国と英語圏、我々のいる日本、そして過去と現代が何の違和感もなしに賢人の言葉で繋がれる。そしてそれを見つめている猫が、人間の本質は、いつであろうが、どこであろうが同じだ、とまるで伝えているかのように描かれている。
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2016年10月23日

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇

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坂口 安吾 著
岩波文庫 903円

文学史で戦後文学に「無頼派」がある。「無頼」とは、辞書によれば「正業に就かず、無法な行いをする者、またはその行為」とある。つまり、きわめて反社会的な価値観である。
しかし、「青年期」は、ゲーテが「疾風怒濤の時代」と呼んだように、内面の葛藤の時期。その時期に、善良で社会規範に合う人間像だけを求めるのは、大人の側の身勝手だ。青年を成長させるのは、無数の宿題よりも、全き一人旅であり、燃える恋であり、慣れぬ社会での労働だ。「無頼」の精神は、自己を模索する青年期にこそふさわしい。
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2016年09月19日

歌よみに与ふる書

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正岡 子規
岩波文庫  540円

せっかく本を読むのだから「おもしろい本」を読みたいのは当然のこと。しかし、その「おもしろい」に「詠み易い」が重なっている本には気をつけた方がいい。それは、見ても見なくてもいいTVのバラエティ番組のように、「おもしろい」だけで、その感触が後にはほとんど残らないからだ。しかしこの本は、まず「おもしろい」にかけては無類。そして、強烈なインパクトによって、忘れられない「感触」を後に残す。

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2016年08月17日

空をつかむまで

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関口 尚
集英社文庫 648円

市町村合併を控えた、北関東のとある海岸近くの村。膝の故障で得意のサッカーを諦めた優太は、廃校が決まった田舎の中学に通う三年生。無理やり入部させられた水泳部には、姫と呼ばれる県の記録保持者と、泳げないデブのモー次郎しかいない。この三人の少年たちが、なくなってしまう美里中学校の名前を残すため、大切な人のため、優勝すべくトライアスロン大会に挑む。

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2016年06月18日

わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か

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平田 オリザ
講談社現代新書 740円+税

日本の教育の「ダブルバインド」
 「学力は優秀だがコミュニケーション能力に劣る」。そんな話をよく聞くし、実際にそう思える生徒と接することも多くなった。日本では、表現教育、コミュニケーション教育が盛んに行われているらしいにもかかわらず、それが苦手な人が目立つ。そして、その理由は実はさまざまだそうだが、最大の問題点は「ダブルバインド(二重拘束)」にある。そう筆者は言う。
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ラベル:国語 教育
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2016年05月03日

家族の言い訳

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森 浩美
双葉文庫
648円

高校入試の国語の問題で、著者として必ずと言っていいほど登場する、作詞家の森浩美氏が手掛けた短編集。
各話の主人公たちは、それぞれ家族に問題を抱えている。しかも、彼らにとっては結構な大問題。それに直面したときの行動を客観的に見ると、「なぜそんな選択をするのだろうか…」と、もどかしさを覚える部分も多々ある。しかし、人間は、そんなものなのだと思う。いつも正しい選択ができるわけではない。ダメな方に行こうとすることもある。それは客観的にはイライラするが、自分の身に置き換えると共感できる。そんな誰もが持つ、弱い部分さえ表現しているところが、人間らしくて魅力的だ。
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2016年01月20日

私とは何か 「個人」から「分人」へ

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平野 啓一郎 著
講談社現代新書  
740円+税

相手によって自分を変えていると気づいたことはないだろうか?たとえば、友人Aには、自然に接することができるのに、Bの前だと遠慮がちになる、というように。そしてそんな自分の一貫性のなさを情けなく感じて悩むかもしれない。「私」とは、変化してはいけないものなのだろうか?

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2015年11月22日

「死にざま」こそ人生

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「ありがとう」と言って逝くための10のヒント
柏木 哲夫
朝日選書 740円+税

私たちは誰でも、程度の差はあれ、日々「どう生きるか」について悩んでいる。長く続く「生きる」ことへの試行錯誤は、まるで終わりなく続くかのようだ。しかし、私たちの人生は必ずいつか終わる。その時、私たちはどう死ぬか。どんな言葉とともに旅立つのか。自分の悲運を嘆き、周囲を詰って、この世を去るのか。それとも、自分の運命を受け入れ、身近にいる人たちに感謝を伝えて、向こう側に逝くのか――。
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2015年09月10日

海を感じる時

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中沢けい
講談社文芸文庫 1,728円

男性と女性の感性に差をつけることが正しいかどうかはわからない。しかし、2009年に初放送されたNHKスペシャル「女と男」でも明らかだったように、近年の脳科学の研究の成果は、二つの性が決定的に異なることを明らかにしている。目印を頼りに目的地にたどり着く女性と、方位や距離感で到達する男性が、それぞれ異なる言語と思考の世界を持っているとしても、不思議ではないどころかもはや理に適っている。
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posted by 紫雲国語塾 at 14:21| 大分 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 紫雲の本棚から | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする