「紫雲国語塾」のオフィシャルブログです。
塾内通信「紫のゆかり」「ことばのちから」に掲載された記事をご紹介します。
また、最新行事についてお知らせいたします。

2018年08月29日

101年目の孤独――希望の場所を求めて

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高橋源一郎
岩波書店 1,800円+税

朝日新聞に、作家・高橋源一郎さんによるルポルタージュの大きなコラムが定期的に掲載されていました。個人の幸福と富の追求ばかりが無前提に信じられている時代に、そうではない視点を示してくれる、数少ない文章でした。そもそも、作家という職業の人たちが、必ずしもみんな現代という時代にコミットしているわけではないでしょう。現代に自ら関わる作家である彼の、「著者初のルポルタージュ」として世に出た、この本をぜひ読んでほしいです。
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2018年02月06日

穴/HOLES 

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ルイス・サッカー
幸田 敦子
講談社文庫 620円・税込

ある日、主人公の少年、スタンリーは無実の罪で少年矯正施設に収容され、一日ひとつ、大きな穴を掘るという罰を科される。監視役の大人たちの理不尽さなどに苦しめられながらも、スタンリーは周囲の仲間と協力しつつ、苦境と戦い続ける。そんな中で、この穴掘りが単なる矯正を目的としたものではなく、何かを探すためのものであることを知ったスタンリーたちは……。
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2017年11月24日

いのちの半ばに

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アンブローズ・ビアス
西川 正身
岩波文庫・絶版

「国語力をつけるにはどうすればいいか」という質問を受けることが多い。ところがこの質問をされる方は、必ずと言っていいほど、質問した瞬間にご自分で答に気づいた表情をし、私がおもむろに「読書が…」と口を開くと、「やはり…」となる。「読書」は、本当は当然の行為なのに、いつのまにか、趣味や嗜好性の一部に取り込まれ、「読書しない」という個性があるかのように語られる。あるいは、「読書したら国語の成績が上がる」かどうかで、読書という行為の価値を計ろうとする。「これを飲めば痩せる」というのは、商業主義の好む論理であって、それを読書に当てはめるのはあまりにナイーブだ。宿題の山、試験の嵐、部活動の疲労、といった苦難の中、どうか読書をしてほしい。その意義は、テストの成績ではなく、あなたの思考力をつくり、感性を育て、判断力を高め、想像力を大きくする。読書は、あなたの人間形成に寄与する、もっと高い次元のものだとわかってほしい。
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2017年10月05日

夜想曲集

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カズオ・イシグロ

早川書房 ・1680円

カズオ・イシグロ(1954-)は、『日の名残り』(1989年)で、イギリスで最も権威ある賞「ブッカー賞」を受賞した、世界的作家。長崎県長崎市で、日本人の両親の元に生まれましたが、5歳でイギリスに移住。成人までは日本国籍、その後、イギリスに帰化しています。2010年に映画化された『わたしを離さないで』で、また、2012年4月に、NHKで「カズオ・イシグロを探して」と題したドキュメンタリーが放送され、日本でもより知られるようになりました。
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2017年05月22日

旅行者の朝食

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米原 万里
文春文庫 540円

「生きるために食べる」のか、「食べるために生きるのか」。本書の中で印象的に用いられる言葉です。あなたは自分のことをどちらだと考えるでしょうか?本書は、後者であることをはっきりと自認する筆者による、食べ物についての著書ですが、単なるエッセイではありません。
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2017年01月16日

楽園のカンヴァス

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原田 マハ

新潮社 1600円+税

アンリ・ルソーが残した最後の作品「夢」。しかし、ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンは、とある大邸宅でその「夢」に酷似した絵画を目にする。持ち主である富豪は、その真贋を見極めた者にその絵画を譲ることを宣言するが、その期限は七日間。ティムと、日本人研究者、早川織絵は、対立しながらも、富豪から手渡された古書を読み進めていくことで、その絵画に秘められた謎に立ち向かう…。
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2016年11月13日

ねこのみち

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クオン・クエンシャン
薩摩美知子 訳
アーティストハウスパブリッシャーズ 絶版

中国人の著者が、味わいのある四〇点の猫の墨絵とともに、『論語』『唐詩選』『紅楼夢』『禅』『孫子』などより厳選した、孔子、孟子、孫武らの名言を、英語とわかりやすい日本語の口語訳で紹介した一冊。中国と英語圏、我々のいる日本、そして過去と現代が何の違和感もなしに賢人の言葉で繋がれる。そしてそれを見つめている猫が、人間の本質は、いつであろうが、どこであろうが同じだ、とまるで伝えているかのように描かれている。
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2016年10月23日

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇

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坂口 安吾 著
岩波文庫 903円

文学史で戦後文学に「無頼派」がある。「無頼」とは、辞書によれば「正業に就かず、無法な行いをする者、またはその行為」とある。つまり、きわめて反社会的な価値観である。
しかし、「青年期」は、ゲーテが「疾風怒濤の時代」と呼んだように、内面の葛藤の時期。その時期に、善良で社会規範に合う人間像だけを求めるのは、大人の側の身勝手だ。青年を成長させるのは、無数の宿題よりも、全き一人旅であり、燃える恋であり、慣れぬ社会での労働だ。「無頼」の精神は、自己を模索する青年期にこそふさわしい。
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2016年09月19日

歌よみに与ふる書

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正岡 子規
岩波文庫  540円

せっかく本を読むのだから「おもしろい本」を読みたいのは当然のこと。しかし、その「おもしろい」に「詠み易い」が重なっている本には気をつけた方がいい。それは、見ても見なくてもいいTVのバラエティ番組のように、「おもしろい」だけで、その感触が後にはほとんど残らないからだ。しかしこの本は、まず「おもしろい」にかけては無類。そして、強烈なインパクトによって、忘れられない「感触」を後に残す。

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2016年08月17日

空をつかむまで

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関口 尚
集英社文庫 648円

市町村合併を控えた、北関東のとある海岸近くの村。膝の故障で得意のサッカーを諦めた優太は、廃校が決まった田舎の中学に通う三年生。無理やり入部させられた水泳部には、姫と呼ばれる県の記録保持者と、泳げないデブのモー次郎しかいない。この三人の少年たちが、なくなってしまう美里中学校の名前を残すため、大切な人のため、優勝すべくトライアスロン大会に挑む。

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2016年06月18日

わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か

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平田 オリザ
講談社現代新書 740円+税

日本の教育の「ダブルバインド」
 「学力は優秀だがコミュニケーション能力に劣る」。そんな話をよく聞くし、実際にそう思える生徒と接することも多くなった。日本では、表現教育、コミュニケーション教育が盛んに行われているらしいにもかかわらず、それが苦手な人が目立つ。そして、その理由は実はさまざまだそうだが、最大の問題点は「ダブルバインド(二重拘束)」にある。そう筆者は言う。
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ラベル:国語 教育
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2016年05月03日

家族の言い訳

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森 浩美
双葉文庫
648円

高校入試の国語の問題で、著者として必ずと言っていいほど登場する、作詞家の森浩美氏が手掛けた短編集。
各話の主人公たちは、それぞれ家族に問題を抱えている。しかも、彼らにとっては結構な大問題。それに直面したときの行動を客観的に見ると、「なぜそんな選択をするのだろうか…」と、もどかしさを覚える部分も多々ある。しかし、人間は、そんなものなのだと思う。いつも正しい選択ができるわけではない。ダメな方に行こうとすることもある。それは客観的にはイライラするが、自分の身に置き換えると共感できる。そんな誰もが持つ、弱い部分さえ表現しているところが、人間らしくて魅力的だ。
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2016年01月20日

私とは何か 「個人」から「分人」へ

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平野 啓一郎 著
講談社現代新書  
740円+税

相手によって自分を変えていると気づいたことはないだろうか?たとえば、友人Aには、自然に接することができるのに、Bの前だと遠慮がちになる、というように。そしてそんな自分の一貫性のなさを情けなく感じて悩むかもしれない。「私」とは、変化してはいけないものなのだろうか?

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2015年11月22日

「死にざま」こそ人生

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「ありがとう」と言って逝くための10のヒント
柏木 哲夫
朝日選書 740円+税

私たちは誰でも、程度の差はあれ、日々「どう生きるか」について悩んでいる。長く続く「生きる」ことへの試行錯誤は、まるで終わりなく続くかのようだ。しかし、私たちの人生は必ずいつか終わる。その時、私たちはどう死ぬか。どんな言葉とともに旅立つのか。自分の悲運を嘆き、周囲を詰って、この世を去るのか。それとも、自分の運命を受け入れ、身近にいる人たちに感謝を伝えて、向こう側に逝くのか――。
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2015年09月10日

海を感じる時

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中沢けい
講談社文芸文庫 1,728円

男性と女性の感性に差をつけることが正しいかどうかはわからない。しかし、2009年に初放送されたNHKスペシャル「女と男」でも明らかだったように、近年の脳科学の研究の成果は、二つの性が決定的に異なることを明らかにしている。目印を頼りに目的地にたどり着く女性と、方位や距離感で到達する男性が、それぞれ異なる言語と思考の世界を持っているとしても、不思議ではないどころかもはや理に適っている。
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2015年06月15日

兎の眼

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灰谷健次郎
理論社 1404円
角川つばさ文庫 842円

大学を出たばかりの新任教師・小谷芙美先生が受け持ったのは、学校では一言も口をきかない一年生・鉄三。決して心を開かない鉄三に打ちのめされる小谷先生だったが、鉄三の祖父・バクじいさんや同僚の「教員ヤクザ」足立先生、そして子どもたちとのふれ合いの中で、苦しみながらも鉄三と向き合うことを決意する。そして、次第に鉄三の豊かな可能性に気づいていく…。
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2015年05月10日

シッダールタ

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ヘルマン・ヘッセ
新潮文庫 432円

人が苦しみの中にあるとき、救いというものは、それほど多くあるわけではない。家族や友人の励まし。信じる教え。あるいは、大好きな景色や音楽。そして、大切にしてきた言葉。私たちは、苦しみをどう抱え、向き合い、乗り越えていくのか。
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2015年03月30日

深呼吸の必要

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長田 弘
晶文社 1,944円

小学校や中学校の教科書に必ずと言っていいほど登場する、長田弘氏の詩集。この詩集は、「あのときかもしれない」という、人が大人になる瞬間のこと、「大きな木」という何気ない日常の描写の二部構成になっている。
「言葉を深呼吸する、あるいは言葉で深呼吸する。そうした深呼吸の必要を覚えた時ときに、立ち止まって、黙って、必要なだけの言葉を書きとめた。そうした深呼吸のための言葉が、この本の言葉の一つひとつになった。」これは著者のあとがきの言葉だ。詩の一遍一遍を読み、言葉を反芻していると、木に体をあずけ、木の温もりと鼓動を感じている時のように、自分の心でも体でもない、もっと深い部分に侵食していくような感覚を味わうことができる。著者の作品は、どれもこのように人間の根元的な部分に訴えかけてくる力がある。続きを読む
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2014年11月25日

びんの悪魔

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R・L・スティーブンソン
福音館書店 1,080円

『宝島』と『ジキル博士とハイド氏』を知らない人はおそらくいないでしょう。スティーブンソンはその著者。今回は彼の短編小説を紹介します。
物語の舞台は南国ハワイ。そこでケアウエが出会ったのは不老不死以外の望みならどんなことでも叶えてくれる不思議なびん。しかし、地獄の炎でねり固められたというそのびんを死ぬまで持っている者は、地獄におちることになる。びんを手放したければ、かならず自分が買ったときよりも安い値段で、誰かに売らなければならない。ケアウエは自分の欲のために、幸せのために、そしてときに愛のために、魔法のびんを追い求める・・・・・・。

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2014年09月29日

人生なんて無意味だ

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ヤンネ・テラー
幻冬舎 1,028円

「ニヒリズム」という言葉がある。ちゃんと訳せば「虚無主義」。実際に使うときには「世の中のすべてが意味がないとカッコつけること」みたいな意味だ。
生まれてきたのもただの偶然。死ぬのもそう。がんばって勉強しても病気になるかもしれないし、偏差値最低でも幸せな人生かもしれない。それが現実。それでも僕たちは、人生に意味を見出して生きていこうとしている。
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posted by 紫雲国語塾 at 21:05| 大分 | Comment(0) | TrackBack(0) | 紫雲の本棚から | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする